海辺の広大な敷地に本宅を持つ千崎家。

古くから続くその家系には、何代かに一度、ノドに小さなアザを持つ子が生まれてきた。

そのアザは「千寿桜(せんじゅおう)」と呼ばれ、千年の幸を約束された印と言い伝えられていた。

しかし、別名「千呪桜(せんじゅおう)」とも呼ばれ、千崎家の忌まわしい呪いの印とささやかれ、

恐れられていた。


千崎海斗(せんざきかいと)は、そのノドに千寿桜を宿す忌避の直系として生まれた。

次期当主として生まれながら、幼い頃に父の命令によって海辺の本宅を離れ、

母親と共に深い山奥での生活を強いられていた。

山奥での孤独な日々の中、ノドのアザ・千寿桜がうずき始めると、

海斗は空気中に怪しい光の粒子を見た。


海斗が17歳のとき、山奥の屋敷に訃報が届く。海斗の父親が何者かによって殺された。

海斗は急遽、千崎家の本宅に戻るようにと要請された。


千崎家の本宅は、明治時代に建てられたという由緒ある邸宅で、その裏山もすべて

千崎家の所有する土地だった。

裏山には千弦神社(せんげんじんじゃ)という神社があり、巫女によって守られていた。

幼い頃に離れて以来、一度も訪れたことのない美しい本宅。

海斗は潮風と波の音に、懐かしさを感じる。


しかし、その土地では最近、「ミイラ殺人事件」と呼ばれる怪奇殺人事件が巷を騒がせていた。

人がミイラのように干からびて発見されることから、そう呼ばれていた。

海斗の父親もまた、この事件の被害者だった。

警察の捜査は難航し、犯人の手掛かりが掴めない中、ミイラ殺人の犠牲者が出ていく。

人々は得体の知れない恐怖に怯えていた。


海斗の平穏な日々が終わりを告げる。

ノドのアザが、チリチリとうずき始めた。


止まっていた時計の針が進み始めるように、海斗の運命が静かに滑り出した・・・・・。




写真素材「Photo Fuzzy」